阿部真央

君の唄(キミノウタ) / 答

2019年1月21日にデビュー10周年を迎えた阿部真央。1月22日に約5年ぶりの日本武道館ワンマンライブ「阿部真央らいぶNo.8~10th Anniversary Special~」を開催、ベストアルバム『阿部真央ベスト』をリリースするなど記念の年にふさわしい活動を継続している彼女から、ニューシングル『君の唄(キミノウタ)/答』が届けられた。さらにこの夏には「阿部真央らいぶ夏の陣~2019~」(7月27日/大阪城音楽堂 8月31日/日比谷公園野外大音楽堂)、9月から11月にかけて、阿部真央の原点である全国弾き語りツアー「阿部真央弾き語りらいぶ2019」の開催も決定。アニバーサリーイヤーを駆け抜ける阿部真央に、ニューシングルの制作、夏の野外ライブと弾き語りツアーについて聞いた。

まずはシングル『君の唄(キミノウタ)/答』について聞かせてください。『君の唄(キミノウタ)』は映画『チア男子 !!』主題歌です。
主題歌のお話をいただいて、まず、打ち合わせの日を設けてもらったんです。それまでにできることをしたかったから、原作の小説を読んで。その後、2回現場に行かせてもらったんですよ。1回目は撮影に入る前、俳優のみなさんがチアの練習をしているときで、2回目は撮影の現場を見学させてもらって。最初のときから、出演者のみなさんがテーピングだらけだったんですよ。暑い中、部活みたいな感じでずっと練習していて、「いまの良かったよ」「もう1回!」って励まし合う姿も印象的で。撮影のときはチアの技術も上がっていたし、チームとしての一体感も増していて。「すごい!」と思いましたね。
そのときに感じたことは、曲にも反映されている?
そうですね。具体的に反映した歌詞はないかもしれないけど、みなさんがめちゃくちゃ本気だったから、「私も本気にならないといけない」という刺激の受け方はあったかな。もちろん最初から本気だったけど、みなさんの「できるようにならないといけない」という姿勢がすごかったんですよね。風間(太樹)監督も若い方だし、出演者のみなさんと一緒に和気あいあいとしながら、目標に向かってがんばっていて。その姿がすごくよかったので。
歌詞を書くときは、どんなところにフォーカスしていたんですか?
原作の朝井リョウさんが書こうとしたことと、風間監督が描こうとしたことは、もちろん重なっている部分も多いけど、ポイントが違っているんだろうなと思って。自分を変えたい男の子たちが「男子がやるの?」と思われていたチアに挑戦するという話なんだけど、原作では"自分の力で飛ぶ"という印象が強かったんです。みんなで一緒にがんばるというよりは、個人の成長に焦点に当てているのかなって。風間監督とその話にしたときに、「それも大事だけど、みんなで成し遂げるところを描きたい」ということをおっしゃってて。監督は「チア男子!!」のモデルになったSHOCKERS(早稲田大学男子チアリーディングチーム)を実際に見て感動したという話もしていたのでーーこれは私の想像ですけど――そのときの印象にフォーカスした映像にしたいと思っていたんじゃないかなって。私としては、小説から受けた印象と、監督が描きたいことの両方を網羅したかったんです。最初の提出した歌詞に対して、監督から「もうちょっと"みんなで感"がほしいです」という意見をもらったので、「ひとりじゃ立てないほど辛い日も/その手を握る為に僕がいる」という部分を加えて。
ロックとポップが絡み合うようなサウンドも印象的でした。
監督のなかに「Believe in yourself」のイメージもあったので、同じではないですけど、テンポが速くて、"ロックに振り切らず、ポップ過ぎず"というバランスは共通しているかも。映画のエンディングで流れたり、CMに使われることも意識していたし、まずは作品に寄り添うことにプライオリティを置いていたんだけど、聴いてくれた人は"阿部真央らしい曲"と感じてくれるんじゃないかな。
「答」はTV アニメ『消滅都市』OP 主題歌。こちらはエッジの効いたロックチューンですね。
アニメの制作チームの方からは「かっこいい、暗めのロックでお願いします」というオファーがあって、まさに私が好きなタイプの曲のことを言ってくれてるんだなと。
歌詞は難しかったですね。消滅した都市のなかで唯一生き残った女の子が主人公で、彼女は謎の軍団に追われていて、命を狙われているんです。そこに一人の男性が表れて、その人の助けを借りながら、都市が消滅した理由、「私は誰なんだろう?」ということを追求するストーリーなんですが、曲に関しては作品の世界に沿って、アニメのファンの方に気に入ってもらうだけではなくて、しっかり自分の解釈も入れたくて。ヒントになったのは、アニメのプロデューサーの方に「観てくれる人に問いかける作品にしたい」という言葉ですね。視聴者のみなさんに「あなたはどう思いますか?」「どう生きたいですか?」と問いかけたいっていう。あと、原作のゲームの「だけど、生きていく」というキャッチコピーを見たときも「これだ!」という感じがありました。主人公には受け入れがたいような酷いことがたくさん起きるんですが、それでも前に進む。そのことを含めて、自分なりの解釈を込めながら書いた歌詞ですね。
カップリングには弾き語りの「Flyway」を収録。これは新曲ですか?
うん、最近書いた曲ですね。子供に「何かテーマある?」と聞いたら、「飛行機の歌」って言うので書きました(笑)。この曲、いままでだったらボツにしてたと思うんですよ。私自身は気に入ってるんだけど、サビの歌詞が少ないし、ちょっとキーが高すぎるし、「みんなは好きじゃないかもな」って。でも、しばらく考えてるうちに「どうしてそんなふうに決めつけてるんだろう?」と思って。歌詞もまさに今の私が感じていることですね。飛ぼうと思えば飛べるのに、飛ばないことを選んでるのは自分なんだって、私自身に言ってる感じなので。
いまの阿部真央さんのモードが出てる曲なんですね。
そうですね。デビューから10年経って、いつの間にか"こうじゃなくちゃいけない"と決めてしまっていたところもあるなと思っていて。自分のなかで決めつけたり、縛ってしまうのではなくて、"本当にそうなのかな?"と考えながら、いろんなことをやっていけたらいいですよね。
たとえばどんなところを変えていきたいですか?
一人の時間を持つということかな。私がそうだとは言わないですけど、アーティストって"孤高"みたいなタイプの人が多いし、そういう部分を表現することで支持されているのに、名前が知られるようになったら一人の時間が持ちづらくなるじゃないですか。アーティストじゃなくても、大なり小なり、そういう時間は誰にでも必要だと思っていて。コミュニケーションの制約というのかな(笑)。意識的に人に会わない時間を作るのは大事だなって思ってます。
2019年後半は精力的なライブ活動が続きます。まず夏には「阿部真央らいぶ夏の陣~2019~」(7月27日/大阪城音楽堂 8月31日/日比谷公園野外大音楽堂)を開催。さらに9月から11月にかけて、阿部真央の原点である全国弾き語りツアー「阿部真央弾き語りらいぶ2019」も開催。
みんなに会いに行けるライブが久々の夏の野外ライブ、久々の弾き語りツアーなのはすごく嬉しいし、私も楽しみです。野音は大好きなんですよ。ほどよい解放感があるし、もともと夏の夜が好きだから、ファンのみなさんと一緒に特別な時間が味わえて。ふだんのライブは「トチらないようにしないと」いう気持ちもあるんだけど、野外は「ミスっても大丈夫」みたいな不思議な力があるんですよね。弾き語りのツアーに関しては……弾き語りが大好きというわけではないんですよ、じつは(笑)。ひとりでライブをやるのは大変なので…。でも、最近弾き語りの良さはわかるようになってきた気がしていて。(バンドのライブの)大きい音、いろんな音数のライブとはぜんぜん違って、緊張感だったり、水を打ったような静けさだったり、弾き語りならではの表現があるし、それも私の強みだなって。どっちも出来るのがいちばんいいですよね。大きい会場のポピュラー性が強いライブと、コアな雰囲気の弾き語りのライブと。
1月の日本武道館ワンマンライブも素晴らしかったですが、いま振り返ってみるとどんなライブでしたか?
楽しかったですね。5年前の武道館よりもぜんぜん楽しめたので。武道館、神戸ワールド記念ホールは私にとっても踏ん張りどころのライブだったと思うけど、あれだけファンのみんなが駆けつけてくれたのは本当に感謝ですね。

(インタビュアー:森朋之)